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ぼちぼち のんびり ゆっくりと
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カリンくんは近くにあった椅子に座って、めずらしそうにきょろきょろと店の中を見ていた。
そんな様子が何だかかわいくて、ついつい笑っちゃった。
「ケーキ屋さんて、めずらしいの?」
「うん。だって初めてだから。ここはケーキを売ってるお店なの? とっても甘いにおいがするねえ」
「へえ、初めてなんだ。はい、どうぞ」
あゆみはカリンくんにホットミルクを入れてあげた。
小さい子だったから、ちょっとぬるめにしたんだけど、だいじょうぶかな?
目の前にある机の上にそっと置くと、カリンくんはめずらしそうにじっとそのカップを見ていた。
「ホットミルクだよ。もしかして、キライだった?」
「ううん。飲んだことがないからわかんない」
「え? 飲んだことないの」
「うん」
ホットミルクを知らない人もいるんだなあ。ケーキ屋も初めてって言うし。
変わった子だなあ。
あゆみはそう思いながら、言いました。
「甘くておいしいから飲んでみなよ」
「う、うん」
カリンくんはおそるおそるカップを持って、ふんふんと匂いをかいだ。
何だかねこみたい。
そう思いながらあゆみがじっと見ていると、ゆっくりゆっくり一口飲んだ。
そして、
「おいしい!」
って大きな声で叫んだんだ。
にこにこ笑いながら。
「こんなに甘くておいしいの初めて!」
「本当、良かった」
カリンくんはうれしそうに足をぶらぶらさせながら、こくこくと飲んでいた。
かわいいなあ。
あゆみには弟がいないから、いたらきっとこんな感じかな?
そう思いながら、カリンくんのほわほわの頭をなでたんだ。
カリンくんはびっくりしたようにこちらを見たけれど、へへへっとくすぐったそうに笑った。
「カリンくんの家はどこ? ここの近く?」
「ううん。ずっと、ずっと、遠くだよ」
「え、一人で来たの? お母さんやお父さんは?」
「いないよ」
「いないの?」
「うん。でも、カミサマもいるし、なかまもたくさんいるの」
だから、さみしくないよ。
そうにこにことカリンくんが笑うから、あゆみは何も言えなくなった。
それに、何だか不思議なことを言っていたような気がする。
……カミサマって、一体誰のこと?
そう不思議に思っていたら、奥からお父さんがばたばたと出てきた。
「お父さん、わかったの?」
「うん。田村さんだったよ。店からの帰り道、公園でめぐみ君が転んでしまってね。
あわてて病院へ連れて行ったものだから、そのままケーキを忘れちゃったんだって。
夕方取りにいくから置いておいてくれって」
「めぐみ君、大丈夫なの?」
「ああ。転んだ時に頭を打ったみたいなんだ。それで、病院に行ったらしいよ。でも、大丈夫だったみたいだよ」
「そっかあ、良かった」
「うん。カリンくん」
「はい?」
お父さんは、カリン君の近くへ来ると、そっと腰をおろしました。
そして、カリン君の目の高さに合わせると、にっこりと笑いました。
「あのね、田村さんがありがとうって言ってたよ」
「ううん。いいんです。ぼくも大事なものを落として困った時、けいすけくんがコウバンへ届けてくれたの。
だから、助かったの。
それとおんなじことしただけなの」
「そっか。でも、何かお礼をしたいなあ。何がいいかな?」
「お礼? うーんとね、うーんとね。あ、そうだ!」
「ん?」
「あのね、ぼく、教えて欲しいことがあるの」
「何かな?」
「さっきの箱の中には何が入っていたの?」
「箱?」
「うん。白い箱。持っていてね、とってもやさしくってあたたかい感じがしたよ。
何が入っているのかなあって気になっていたの」
「ああ、あれは、クリスマスケーキだよ」
「クリスマスケーキ? それってなあに?」
「あれ? クリスマスケーキ、知らないの?」
びっくりするお父さんに、あゆみはこっそり言った。
「……お父さん、カリンくん、ホットミルクも知らなかったよ」
「ああ、そうなんだ。じゃあ、カリンくん、お礼にね、クリスマスケーキをあげよう」
「くれるの?」
「うん。クリスマスケーキってどんなものか見て食べてもらった方が早いしね。
うちのクリスマスケーキは美味しいよ。心をこめて作っているし……」
「天使のおすみつきだからね!」
あゆみはにっこり笑っていった。
お父さんもおかしそうにクスクス笑ってる。
「天使のおすみつき?」
「そうそう。ぜひ、カリンくんに食べて帰ってほしいな。ちょっと待っててね」
そう言ってお父さんは店の奥に引っ込んだ。
そして、しばらくして、いそいそと白いお皿を持ってきた。
もちろんその上には天使のクリスマスケーキ。
直径15センチの小さなものだ。
父さんはカリンくんの前にある机の上にケーキを置いた。
「これがクリスマスケーキだよ」
「うわあ! キレイ!」
ほうっとカリンくんが溜息をついた。
真っ白でつやつやな生クリームがきれいな雪みたいに見えるんだよね。
あゆみも大好きなんだ。
お父さんは、そのケーキの一部を切って小さなお皿にのせた。
そして、
「はい、どうぞ」
と、カリンくんに渡す。
すると、カリンくんは目をきらきらさせてケーキを見つめて、そおっとそおっと皿を目の前まで上げた。
それから、くんくんとにおいをかいだんだ。
その姿はやっぱりねこみたいで。
あゆみはくすりと笑ってしまった。
カリンくんは、うれしそうにほおっと息をつくと、一緒についていたスプーンを持って、ケーキをそっとすくった。
そして、はむっと口にふくみもごもごすると、うれしそうにふふふと笑った。
「おいしい! おいしい! とっても甘くてやわらかくて、しあわせの味がするよ!」
「そうかい? ありがとう」
お父さんは、カリンくんの頭をふわふわなでた。
「残りはね、家に帰ってみんなで食べて下さい。しあわせのおすそわけだよ」
「うわあ、ありがとう!」
そう言ってカリンくんはお皿に残っていたケーキをゆっくりとしあわせそうに食べた。
それを見ていたあゆみもお父さんも、とってもうれしい気持ちになった。
だってこんなにおいしそうに食べてくれるんだもの。
作ってよかったなあって思ったの。
<つづく>