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さらさら日記

ぼちぼち のんびり ゆっくりと

クリスマス小話「リリイと花の種」<3-1>




クリスマス小話「リリイと花の種」<3-1>
 

リリイとキットにはお気に入りの場所があります。

そこはリリイが住んでいる所よりも少し上にあって。

晴れた日には、上は星空、下は町の灯が同時に見ることができる、リリイとキットが大好きな場所です。

リリイはキラリの丘と名付けました。

今夜も一人と一匹はほのかに明るい山道をテクテクと歩き、キラリの丘へ来ました。

念の為、植木鉢も持って来ています。

良く澄んだ透明な空。

空も町もとてもきれいです。

リリイとキットはお気に入りの木でできたベンチに座りました。

このベンチもお父さんが作ってくれたんだっけ。

リリイはほおっと息を吐きました。

この場所もお父さんとお母さんから教えてもらったのでした。

今、二人は仕事で遠くへ行っています。

行く前は今年中に帰って来ると言っていたのですが、あののんびり屋の二人ですからもう少し延びるかもしれません。

少し寂しいですが、ここにくればいつだって二人に会えるような気がします。

だからリリイはここが大好きなのでした。

「きれいね、キット」

「ニャア」

今夜は吐く息も白く少し寒いですが、月が明るくとても静かで、心がシンときれいになっていくようでした。

リリイは目の前に置いた植木鉢をじっと見つめます。

そこには朝と同じ蕾のままの一輪の花がありました。

「育て方がわるかったのかしら?」

リリイは、はあっと大きく溜息を吐きました。

土が良くなかったのか。

水をやりすぎたのか。

日光が足りなかったのか。

今となってはわかりません。

せっかく託してくれたのに。

レイとライをがっかりさせてしまうかしら。

後もう少しで咲きそうなのに。

リリイは何だか悲しくなってきました。

「ニャア……」

心配そうにキットも鳴きます。

その時です。


<3-2へ続く>

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