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ぼちぼち のんびり ゆっくりと
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クリスマス小話「リリイと花の種」<3-2>
空の上から一筋の光が降りて来ました。
真っ白でキラキラと輝く光。
初めて見る光です。
静かに、静かに、降りて来て、やがて、リリイとキットの前に達すると、
ふわりと小さな男の子達が現れました。
「レイ、ライ!」
「「こんばんは」」
二人は同時に挨拶をします。
その姿は春に会った時と全く変わらず、二人ともニコニコと笑っていました。
相変わらず、そっくりです。
リリイは慌てて植木鉢を持って二人の前に見せました。
「こんばんは、レイ。ライ。……あのね、お願いされたお花なんだけど、花が咲かなかったの」
ごめんなさい。
ペコリと頭を下げ、リリイは謝りました。キットもニャアと静かに鳴きます。
二人はリリイから花を受け取りました。そして、じっと花を見つめていましたが、
「だいじょうぶだよ」
「うん。だいじょうぶ」
と、にこりと笑ってくれました。
そして、二人が同時に花に手をかざすと。
ふわん。
温かい風が花を包み込み。
シャラン。
音を立て、花が開きました。
濃いピンクと薄いピンクの柔らかそうな花びらが幾重にも重なった、
小さいけれどとてもとても美しい花でした。
もちろん、リリイは見たことがない花です。
「きれい……」
リリイはほおっとため息を吐きました。
「ありがとう」
「ありがとう」
レイとライは頭を下げました。
「この花はどうするの?」
リリイが尋ねます。
「あげるの」
レイが答えます。
「誰に?」
「神様に」
今度はライが。
「神様に?」
「「そう」」
二人は同時にそう言って、すっと天を指さしました。
リリイは上を見上げました。
そこにはキラキラと輝く星がたくさんありました。
とてもとても美しい世界です。
そっか。
この花は神様のプレゼントになるのか。
リリイは胸がこそばゆくなりました。
思わず笑みがこぼれます。
「リリイ。また、お願いがあります」
「え?」
レイはライに植木鉢を渡しすと、ポケットから小さな箱を取り出しました。
そして、箱を開け、リリイに見せます。
そこには、一つの小さな種が入っていました。
「これを植えて欲しいんです」
「花を咲かせて欲しいんです」
「またのんびり屋さんの種なの?」
「そう」
「そう」
「暖かい場所が大好きで」
「新鮮な水が大好きです」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
二人はペコリとお辞儀をしました。
そして、じいっとリリイを見つめています。
真剣な顔です。
リリイはそんな二人を見て、思わずくすっと笑ってしまいました。
「……わかったわ。がんばります」
「ニャ!」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
レイとライはにっこりと笑って、そっと木箱をリリイに渡しました。
そして空を見上げると、先程の真っ白な光が降りて来て、二人を包み込みます。
その光に包まれて、二人はすうっと消えていきました。
リリイとキットは最後までその姿を見つめていました。
そうして。
光がすうっと消えて、空がいつもの星空に戻りました。
「ねえ、キット」
「ニャ?」
「またお願いされちゃったねえ」
「ニャ」
もらった木箱の中には、やはりふかふかの布の上にちょこんと種が一つのっていました。
その種は、ティアドロップの形をしていて、明るい茶色をしていました。
やっぱり見たことがない種です。
「見たことがない種ね。どんな花が咲くのかな。ね、キット」
「ニャーニャ!」
そんなの、咲いてみないとわからないよ。
そんな風にキットが言っているように見えて、リリイも楽しくなってきました。
「そうね。咲かないとわかんないものね。明日さっそく植えてみるわ」
「ニャニャニャ」
リリイはしっかり木の箱を閉じると、大事にポケットの中に入れました
そうして、家の中に帰ろうかなと思ったその時です。
「リリイ! そこにいるのー!!」
と、大きな声が聞こえてきました。
「あ、お母さんだ。お父さんもいる。帰って来たんだ。お帰りなさーい!!」
リリイはそう言って、キットと一緒に両親の元へかけて行きました。
空にはたくさんの星がキラキラと瞬いていました。
<終わり>