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さらさら日記

ぼちぼち のんびり ゆっくりと

お題『ほのぼの10題』03:花を摘みに

<ほのぼの10題>


03:花を摘みに

続きを読むからどうぞ。
 
 
 

◆ライトからマーナへ

マーナへ
前の手紙から随分時間が経ってしまいました。
早く帰るよといいながら、結局遅くなってしまってます。申し訳ない。
今、トイスの町を出て、お隣のクスードに来ています。
実は、トイスでは大変なことが起こってしまって。
僕がトイスを去ろうとしたその瞬間、今にも崩れてしまいそうだった砂の建物が、
いっせいに崩れてしまったのです。
幸運にも砂に巻き込まれることはなかったのだけれど、
さすがの僕も心臓が止まるかと思いました。
ひどい砂煙の後残ったものは、……砂だけ。町の跡形もありません。
初めて見る光景に、僕はただ呆然と見ているだけでした。
何が起こったのか、結局トイスでは何もわかりませんでした。
クスードにくれば何か知っている人がいるかもしれないと思って、しばらく滞在してみようと思ってます。
いくらでも居てくれていいよ。そう言ってくれた家を見つけたので。
だから、そちらへ帰るのには、もう少し時間がかかりそうです。本当にごめん。
できれば、雪が降り始めないうちに帰りたいのだけれど。

ハッチ、美味しくできたみたいで良かった。
お酒も美味しいんだろうな。僕が帰るまで残しておいて欲しいってお願いするのは、
無理か。
こんな静かな夜には、マーナのお父さんとハッチのお酒を飲み交わした夜を思い出します。
優しくて、温かな時間でした。
本当に楽しかったな。

そうそう。このクスードでは、今リュセという花が満開です。
すらりとのびた茎に赤ちゃんの握りこぶしくらいのまるっこい小さな花がついています。
色は白やうすい桃色。
風に揺られてふわふわと踊っているようです。
甘くて優しい香りが町中を満たしていて、とても癒されます。
それと、リュセにはちょっとした言い伝えがあって。
リュセの花で赤色をしている花を見つけられたら幸福が訪れるんだと言われてます。
明日、この町で仲良くなった女の子と一緒に花をつみに行くんだ。
その子のお母さんが病気になってしまって、早く良くなって欲しいんだって。
僕もそのお手伝いをしにいきます。
もし花が見つかったら、マーナにあげるね。
押し花にすればいいよって教えてもらったから。
無事に見つかること祈っててください。

あ、そうだ。トイスで見つけた黒猫、僕の側から離れようとしないので、一緒に旅をすることにしました。
名前はね、『マナ』と言います。
真っ黒な毛並みも、意地っ張りなのに寂しがりやなところも、誰かさんにそっくりだよ。
つれて帰るので楽しみにしててね。

それでは、また、手紙書きます。
ライトから大切なマーナへ。
きらきらと星が瞬く夜空が優しいクスードの町から。


お題配布先→追憶の苑様(http://farfalle.x0.to/

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